映画『Steins;Gate 負荷領域のデジャヴ』 感想

物語は劇場へ収束する!



※ネタバレあり。


 ロードショーから1週間遅れで、Steins;Gate 負荷領域のデジャヴ』を観てきた。ひたすら紅莉栖にブヒりたいファンなら満足できる内容だったが、原作のようなタイムトラベルサスペンスを期待していたファンにはちょっと物足りないかも。
 原作ゲームかアニメ本編を知っていないとストーリーの核心を理解できない映画だったけど、そもそも『シュタゲ』ファン向けの映画だから、それでいいのかな。



物語は本編のTrue Endから1年後
 鳳凰院凶真を始め、相変わらずのラボメン達。
 岡部&紅莉栖は、後日談(アニメ第25話)の空気そのままに、お互いにツンデレのバカップル状態。9年後の『Robotics;Notes』でも結婚はしてなかったっぽいので、この2人はずっとこんな感じのままなのだろうか?ww



錯乱する岡部
 かつて別の世界線で経験した悲劇がフラッシュバックして、中二病どころか狂人さながらに慌てふためく岡部。
 後から思ったけど……あの時、ミスターブラウンの前でSERNやラウンダーがどうこうとか口にしていたら、ヤバかったな。せっかく辿り着いたシュタインズ・ゲート世界線で、悲劇が再来するところだったかも……(色々と無かった事になってはいるけどミスターブラウンはれっきとしたSERNの手駒)。


 ところで、復讐鬼と化した綯さんがタイムリープしてきた件や、鈴羽の想い出を消したくないが為にタイムリープの無限地獄に陥った件は、アニメでは省略された筈だけど……劇場版は原作とアニメを融合させた世界線の追加エピソードとでも解釈しとけばいいのかな。



宮野真守今井麻美の演技が素晴らしい
 タイムリープマシンを作ったと言う紅莉栖に色々と捲し立てる岡部とか、岡部の消失を観測した直後に泣き出す紅莉栖とか、声優さんの名演が光っていた。



岡部の世界線移動
 シュタインズ・ゲート世界線から0.000001%だけズレたr世界線。映画の描写だと、岡部がパッと並行世界へ移動したように見えるけど、『シュタゲ』では多世界解釈は否定されていた筈。あれは、世界全体がシュタインズ・ゲート世界線とr世界線を行ったり来たりしていたと認識すればいいのかな?
 鈴羽の説明も、負荷がどうとか世界線の揺らぎがどうとか、抽象的だったからな……よくわからない。
 ↓とある考察スレに、しっくりくる推測が書かれていたので抜粋。


 r世界線は、観測者が1人であることで発生する問題から産まれた揺らぎなのだと推測。
 所謂「シュレーディンガーの猫」は、箱を開けて観測者が観測した瞬間に事象が確定するという理屈なんだけど、観測者が1人であるが故に、観測結果が揺らぐだけで事象が固定化できなくなる。
 観測者が観測するまでは「生と死が重なり合っている」状態だから誰にも先がわからない=シュタインズ・ゲート世界線だとすると、観測者の岡部が観測することで存在を確立できる。今回は観測者の岡部がリーディングシュタイナーの暴走で見えたデジャヴを現実と錯覚してしまう事により観測結果がぶれ、観測対象が結果が重なり合っていて確定させられないって事態が生じ、その結果「シュタインズ・ゲート世界線の観測者としての視点が存在する事象固定前の空間」=r世界線に移動した。だから、r世界線には観測者たる岡部以外の観測者足りえる可能性を持つ存在がいない。
 でも、観測者Aが死んでると観測してても、観測者Bが観測した結果生きてると観測した場合に、箱の中に居た状態と同様に「生と死が重なり合っている」状態に戻せる。それと同時に、観測者Bが観測者Aを観測し固定化することができる。その結果観測者Aが観測した結果を固定化させることもできる。
 だから紅莉栖が観測者Bとしての資格を得ることでその視点へ入門することができ、引き戻すことが可能になり、尚且つ観測者の視点を損なわずに未来を確定していない世界として継続できるようになった……と解釈できる。



鈴羽が未来からタイムトラベルしてきた理由
 SERNによる世界のディストピア化を回避する為でもなく、第三次世界大戦を回避する為でもなく、素直になれない紅莉栖にムカついたから。未来においてどうしても岡部を存在させねばならない具体的な理由があったのかもしれないけど、この辺がよくわからなかった。と言うか、シュタインズ・ゲート世界線は、タイムマシンが存在しない世界線だった筈では……?



過去の岡部に直接干渉してタイムパラドックスは発生しないのか?
 2005年、まゆりは祖母の死を受け入れられずにいた。そこで岡部は自身を「狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真」とし、彼女を人質という名目で傍に置き、その心を救った。これは原作ゲームでもアニメでも語られた事実(TVで観たマッドサイエンティストの真似をしたとのことだった)。
 今回、紅莉栖は悩める岡部少年に色々アドバイスした後、キスをした。傍目には見知らぬ痴女にいきなりキスされて逃げ出す少年という図だったワケだけど、そんな事より重要なのは、この時点でタイムパラドックスが起きるのではないかという事。


 元々、α世界線でもβ世界線でも、岡部少年は見知らぬ痴女にキスされたことがあった……ってことか(世界線の収束)。紅莉栖が痴女と自分とをすり替えて、シュタインズ・ゲート世界線が他の世界線の記憶とは違うと印象付けたと。



 ――深く考えすぎると悶々としてしまうけど、ファンなら観て損は無い『助手タインズ・ゲート』だったと思う。今は色々と多忙なのだけど、時間ができたら『線形拘束のフェノグラム』も買おうかなぁ。